令和8年度診療報酬改定において、リンパ浮腫に関する診療報酬制度が拡充され、2026年6月1日より施行されます。
今回の改定は
① リンパ浮腫複合的治療料の見直し
② ICG蛍光リンパ管造影検査に対する保険収載
③ 婦人科がんのセンチネルリンパ節生検手術に対する保険収載
の3点において、リンパ浮腫医療に関わる変更が行われます。
「治療」「診断」「予防」の三つの側面が制度として評価されたことは、リンパ浮腫医療にとって大きな前進だと感じています。
① リンパ浮腫複合的治療料の見直し
従来のリンパ浮腫に対する、圧迫療法、医療者によるリンパドレナージ、圧迫下の運動、スキンケア、セルフケア指導などを組み合わせた「複合的治療」の診療報酬が引き上げられます。
・重症(60分以上)200点 → 500点
・重症(40~60分未満)350点(新設)
・その他 100点 → 150点
複合的治療料が見直されることにより、医療施設は保険診療を継続・実施しやすくなり、リンパ浮腫外来の維持・増加や、診療枠や他院患者受け入れの増加、保険診療で受けられる治療内容の拡充などが期待されています。
リンネットが厚生労働省へ提出した要望書においても、保険診療の拡大は最も重要な要望事項として位置づけていました。患者が経済的負担によって治療を諦めることなく、医療機関が持続可能な形で診療を継続できる環境づくりが必要だと考えていたためです。
② ICG蛍光リンパ管造影検査に対する保険収載
インドシアニングリーン(ICG)という色素を用いて、リンパ液の流れをリアルタイムで可視化する画像検査に対して、新たに保険収載されました。
目に見えないリンパの滞りなどをモニターで確認できる、身体への負担が少ない検査です。外科治療の方針決定に利用されることはもちろん、早期診断や適切な治療選択に貢献することが期待されま
③婦人科がんのセンチネルリンパ節生検手術に対する保険収載
子宮悪性腫瘍手術における、センチネルリンパ節生検に対して新たに保険収載されました。
センチネルリンパ節生検は、「見張りリンパ節」と呼ばれるがん細胞が最初に辿り着くリンパ節を採取し転移の有無を正確に調べる検査であり、不必要なリンパ節郭の切除の省略によりリンパ浮腫の発症を軽減できることが明らかになっています。
<要望活動>
今回の改定は、長年にわたりリンパ浮腫医療に取り組んできた医療者・学会・患者団体それぞれの積み重ねの延長線上に実現したものだと感じています。
リンネットでは、全国の患者団体・学会・医療者・関係団体と連携しながら、厚生労働省への要望活動に取り組んできました。
2025年には、患者の実態調査をベースに、58の患者団体、10学会、1協議会、2協会との連名で、鰐淵厚生労働副大臣へ要望書を提出し、厚労省への陳情を丁寧に行ってきました。
https://lymnet.jp/20250521-2/
この一連の要望活動については、日本リンパ浮腫治療学会雑誌において、海野直樹先生らによる特別寄稿として掲載されました。今回の改定に向けた取り組みが、単なる活動報告ではなく、今後につながる記録として学術の場に記録として残されたことを大変心強く感じています。
今回の診療報酬改定は、大きな前進ですが、
・保険適用範囲のさらなる拡充
・弾性着衣等の経済的負担
・地域による診療体制の差
・相談支援体制の充実
・就労や社会参加への支援
など、依然として多くの課題が残されています。
今回の改定はゴールではありません。制度改定の効果が実際に患者へ届くよう、リンネットとしても引き続き取り組んでまいります。また、現存する多くの課題についても、患者の声を社会へ届けながら、より良いリンパ浮腫医療の実現に向けて邁進してまいります。
<参考資料>
・ 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定」資料








